タイムアウトで確認したはずのプレーが、コートに戻った途端に違う形になっている。ベンチから声を張っても、会場の歓声にかき消されて届かない。この記事は、そんな「作戦の伝え方」を整えたいミニバス〜中学・高校のコーチに向けて書いています。
ここで扱うのは審判のシグナルではなく、ベンチからコート、選手から選手へ作戦を伝えるためのサインプレーです。コールの決め方を番号制・文字制・名前制で比べ、自チームに合う選び方、ハンドサインの実例、相手に読まれる・選手が忘れるといった問題への対策まで順に説明します。
本記事はiPad・iPhone向けバスケ作戦盤&スコアブックアプリ「BoardStrategist」の開発者が書いています。
サインプレーで伝えるのは「どのプレーをやるか」
サインプレーとは、あらかじめ決めておいたセットプレーを、声(コール)や手の合図(ハンドサイン)で呼び出す仕組みです。出す人はコーチ(ベンチから)と、ポイントガードなどコート上の選手の2通り。ベンチからなら声で足りますが、コート上の選手が出す場合は相手の目の前で行うので、片手で素早く示せるハンドサインへの置き換えが必要になります。
つまりコールを決めるときは、「言いやすく聞き取りやすいか」と「ハンドサインに置き換えやすいか」の2つを最初から意識しておくことが大切です。
コールの決め方は3タイプ
プレーの呼び方には、大きく番号制・文字制・名前制の3つがあります。特徴を並べると次の通りです。
| 方式 | コールの例 | ハンドサイン | 向いているチーム |
|---|---|---|---|
| 番号制 | 1番と5番のピック&ロールなら「15」 | 片手で1、もう片手で5を示す。置き換えが最も簡単 | 初めてサインプレーを導入するチーム、プレー数が少ないチーム |
| 文字制 | 動きの形の頭文字などで「C」「V」「O」 | 片手で文字の形を作る。形が作りやすい文字に限られる | 番号制と併用してプレーの種類を増やしたいチーム |
| 名前制 | 動作そのものに名前を付けて「ドラッグ」「フレックス」 | アクションごとに独自の合図を決める。覚える量は多いが読まれにくい | アクションが多く、選手がバスケ用語に慣れているチーム |
番号制が最も一般的で、選手番号の組み合わせなら「誰と誰のプレーか」がひと目で分かります。ただし指の本数だけで表す方式には数に限りがあるので、プレーが増えてきたら文字や名前を足していくのが無理のない順番です。
自チームに合う方式の選び方
- 誰が出すか:コーチがベンチから出すのが中心なら、声で言いやすい名前制でも困りません。コート上の選手が出すなら、片手で示せる番号制・文字制を軸にします
- プレーの数:まずは5つ以内に絞り、番号だけで足りる範囲から始めます。増えてきたら名前制を追加します
- 年代:小学生や中学生では、方式より「覚えられる数」が上限になります。学年や習熟度に合わせて少ない数から始めるのが筆者の勧めです
- 場面:エンドラインからのスローイン(BLOB)とサイドラインからのスローイン(SLOB)では使えるプレーが違うので、場面ごとに体系を分けます
ハンドサインの実例
ハンドサインには、選手同士が瞬間的に意思を伝える合図と、プレーそのものを呼び出す合図があります。チームで自由に決めてよいものですが、よく使われる例を挙げておきます。
選手同士の合図の例
- 手のひらを開く(パー):パスをくれ
- 指差し:前方にパスをくれ
- 握りこぶし(グー):バックドアを狙う
- 握りこぶしを上げる:スクリーンに行く
- 頭に触れる:ハイピックを仕掛ける
アクションを呼び出す合図の例
- ミドルのピック&ロール:頭をタップ、または握りこぶしを掲げる
- サイドのピック&ロール:脇や腿など体の側面をタップ
- スリップ:腕でXの形を作る
- ホーンズ:人差し指と小指を立てて角に見立てる
- フレックス:腕で力こぶを作る
- ポストアクション:握りこぶしで胸を叩く
- フレア/バックスクリーン:背中をタップ
合図は「動きを連想できる形」にしておくと、選手が覚えやすく思い出しやすくなります。
読まれる・忘れられる問題への対策
相手に読まれる
同じ相手と何度も対戦すると、コールはそのまま覚えられます。対策は2つ。1つ目は、その試合・そのピリオド限定の「ずらし」の約束事です。「5番」とコールしたら実際は4番のプレーを行う、といった「マイナス1のルール」を決めておく方法です。2つ目は、そもそも読まれても崩れないプレーにしておくこと。守備がこう来たらこう返す、という2つ目・3つ目のオプションがあれば、最初の動きを読まれても攻め手は残ります。
選手が忘れる
コールを増やしすぎると、試合中に選手の頭から抜けます。筆者の実務的な工夫は、コールを頻出のプレーだけに厳選して練習で毎回同じ呼び名で反復すること、そしてサイン表を「見れば思い出せる形」でベンチに置いておくことです。配置と合図を一緒に見せられると、言葉だけの確認より早く戻ります。
サイン表とプレーを紐づけて管理する|BoardStrategistでできること
サインプレーの運用で面倒なのは、コール名・ハンドサイン・配置と動きがバラバラの場所に書かれていることです。BoardStrategistのプレー管理では、作戦盤で描いたプレーに名前を付けて保存し、カテゴリ分けして一覧できます。プレー名をそのままコール名(「15」「ホーンズ」など)にし、カテゴリをBLOB用・SLOB用で分けておくと、それ自体がサイン表になります。
各プレーにはステップ説明とキーポイントを付けられるので、キーポイントに「合図:頭をタップ」のようにハンドサインを書いておけば、配置・動き・合図が1か所にまとまります。「読まれた後のオプション」はバリアントとして同じプレーに追加でき、フレームを重ねた動きは0.5倍・1倍・2倍でアニメーション再生、動画として選手に共有もできます。作り方はアニメーション化の記事で紹介しています。
ゼロから描くのが大変なら、戦術ライブラリのエンドライン・サイドラインなど9カテゴリ・95プレーを土台にできます。各プレーには守備の対応別に2〜3通りのオプションが付いていて、「作戦盤で開く」で配置を読み込み、自チームの番号と合図に合わせて描き替えられます(サンプル以外はProで開放)。
よくある質問
Q1. サインプレーは番号・文字・名前のどれで決めるのが一般的ですか?
A. 選手番号を組み合わせる番号制が最も一般的です。文字や動作名を組み合わせて使うチームも多く、1つの方式に統一する必要はありません。プレーが少ないうちは番号制、増えてきたら名前制を足す順番が無理のない進め方です。
Q2. ハンドサインとコール(声)はどちらを使うべきですか?
A. 両方を組み合わせて使うチームが多いです。ベンチからコーチが出す場合は声のコールが中心になり、コート上で選手同士が出す場合や騒がしい会場ではハンドサインの方が伝わりやすくなります。コールを決める段階で、片手のジェスチャーに置き換えやすいかを考えておくと運用が楽です。
Q3. サインが相手に読まれたらどうすればいいですか?
A. 対策は2つあります。1つは試合やピリオド限定で「コールした番号より1つ小さい番号のプレーを実行する」といったずらしの約束事を用意しておくこと。もう1つは、そもそも読まれても崩れないように、守備の対応に応じた2つ目・3つ目のオプションをプレー側に用意しておくことです。
Q4. BLOBとSLOBでサインは分けるべきですか?
A. 分けて管理するのが一般的です。エンドラインからのスローイン(BLOB)とサイドラインからのスローイン(SLOB)ではスタート位置が違い、使えるセットプレーも変わります。BLOB用・SLOB用でコールの体系を分け、それぞれの中で番号や名前を振ると、選手が場面ごとに迷いにくくなります。