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オフェンスレーティングとは|ORtg・DRtg・NetRtgで攻守の効率を測る

「80点も取ったのに負けた」「相手は60点しか取ってないのに、なんだか強かった」――スコアを付けていると、合計得点と勝敗の手応えが噛み合わない試合に出会います。この違和感の正体は、多くの場合テンポ(試合の攻防回数)にあります。この記事は、得点の多い少ないだけでチームを評価することに限界を感じ始めた、中学・高校の部活動から社会人まで、スタッツをもう一歩深く使いたいコーチ・マネージャーの方に向けて書いています。

前回のFour Factorsとは|バスケの勝敗を決める4つの数字の見方では、勝敗を左右する4つの要素を紹介しました。本記事はその続編にあたります。Four Factorsが「何を直すか」を教えてくれるのに対し、今回扱うレーティングは「そもそも自チームの攻守はどれくらい効率的か」を1つの数字で表す、いわばチーム全体の通信簿です。

本記事はiPad向けバスケ作戦盤&スコアブックアプリ「BoardStrategist」の開発者が書いています。後半でアプリの機能に触れますが、レーティングの考え方そのものは普遍的で、紙のスコアシートからでも理解しておく価値のある内容です。

ポゼッションという物差し

レーティングを理解する鍵は、たった一つ、ポゼッションという考え方です。ポゼッションとは「攻撃権を持っている状態」、ざっくり言えば攻撃1回のことです。ボールを持ってから、シュートを打つ・ターンオーバーする・ファウルをもらうなどして攻撃権が相手に移るまでが、1ポゼッションです。

ここで大事な事実があります。バスケは、攻撃権が交互に入れ替わる競技です。だから1試合の中で両チームの攻撃回数はほぼ同じになります。この「回数がほぼ揃う」という性質があるからこそ、攻撃回数を共通の物差しにできます。

そこで登場するのが「100ポゼッションあたり」という規格化です。試合ごとに攻撃回数は違いますが、すべてを「もし100回攻めたら何点か」に換算し直せば、テンポの速い試合も遅い試合も、同じ土俵で効率を比べられます。単価をそろえて商品を比べるのと同じ発想です。攻撃回数(ポゼッション数)は、おおよそ次のように見積もります。

式の細かい係数を覚える必要はありません。「攻撃が終わった回数を数えている」というイメージだけ持っておけば十分です。この物差しの上に、これから紹介する3つのレーティングが乗っています。

ORtg・DRtg・NetRtgの読み方

ポゼッションという物差しが手に入れば、あとは割り算をするだけです。3つの数字を順番に見ていきます。

ORtg(オフェンスレーティング)

ORtgは、100ポゼッションあたりに何点取れるかを表します。式はこうです。

たとえば、90ポゼッションで81点取った試合なら、81 ÷ 90 × 100 = 90。「100回攻めたら90点取れるチーム」という意味です。合計得点が81点という事実だけでは効率は分かりませんが、ORtgにすると攻撃の質が一つの数字で見えます。

DRtg(ディフェンスレーティング)

DRtgは、100ポゼッションあたりに何点取られるか。守備側の同じ計算です。

ORtgと違い、DRtgは低いほど良い数字です。守備が固いチームほど、100回攻められても失点が少なく済みます。

NetRtg(ネットレーティング)

最後は、攻守をまとめた総合成績です。

NetRtgは、100ポゼッションあたりで相手にどれだけ点差をつけられるかを表します。先ほどのORtg 90のチームがDRtg 85だったなら、NetRtgは+5。「同じ回数攻め合えば、100回につき5点勝ち越せるチーム」ということです。プラスなら平均して勝ち越せる、マイナスなら負け越す傾向――チームの実力を最も端的に示す一つの数字が、このNetRtgです。参考までに、NBAでは近年リーグ全体のORtg平均がおよそ110〜115前後で推移していますが、これはあくまでプロの水準です。カテゴリが変われば妥当な水準も変わるので、この数字を自分たちの合格ラインとして受け取る必要はありません。

Paceが速い=強い、ではない

ここが本記事のいちばん伝えたいところです。合計得点でチームを評価すると、なぜ判断を誤るのか。その答えがPace(ペース)PPPにあります。

Paceは、1試合のポゼッション数(テンポ)です。速攻を多用してどんどん攻めるチームはPaceが高く、ゆっくり時間を使って攻めるチームはPaceが低くなります。ここで誤解してはいけないのは、Paceはあくまで攻防の「回数」であって、「効率」とは別物だということです。Paceが速いチームは、1回あたりの効率が平凡でも、攻める回数が多いぶん合計得点はふくらみます。「たくさん点を取る=強い」という直感が外れるのは、このためです。

一方のPPP(Points Per Possession)は、1ポゼッションあたりの得点。ORtgを100で割ったものと同じで、攻撃の「質」を測ります。PPPが1.0なら、1回攻めるごとに平均1点。0.9のチームより1.0のチームのほうが、テンポに関わらず攻撃は優秀です。

整理すると、合計得点 ≒ 効率(PPP/ORtg)× 回数(Pace)という掛け算です。だから得点の多さだけを見ると、効率の高いチームと、ただテンポが速いだけのチームを取り違えてしまう。Paceは量、PPP・ORtgは質――そして勝敗に直結するのは質のほうです。80点取って負けたあの試合は、テンポが速く回数が多かっただけで、1回あたりの効率では相手に負けていた、という読み解きができるわけです。

実務での使い方

数字の意味が分かったら、あとは現場での回し方です。レーティングは、次の3つの見方で力を発揮します。

① 自チームの試合間で比べる。レーティングの一番シンプルな使い道は、自分たちの推移を追うことです。合計得点は相手の強さやテンポに揺さぶられますが、ORtg・DRtgならテンポの違う相手との試合でも同じ物差しで並べられます。「先週はORtg 95、今週は88に落ちた」なら、勝ち負けとは別に攻撃の質が下がったサインとして拾えます。

② 相手との差分で強さを測る。NetRtgを対戦相手と並べれば、どちらが効率で上回っていたかが一目で分かります。競り負けた試合でも、NetRtgがほぼ互角だったなら地力の差は小さく、勝機は十分――といった手応えの言語化ができます。

③ ラインアップ分析へ広げる。レーティングはチーム全体だけでなく、コート上の5人組(ラインアップ)ごとにも出せます。BoardStrategistでは、5人組ごとのOffRtg・DefRtg・±(プラスマイナス)を見られます。「このスターター5人はOffRtgは高いが、ある交代の組み合わせにするとDefRtgが跳ね上がる」といった、合計得点だけでは絶対に見えない相性が浮かび上がります。誰と誰を同時に出すべきかの判断材料になります。指標そのものの基礎を復習したいときは、スタッツ活用入門も合わせてどうぞ。

手計算は大変|BoardStrategistでの自動算出

ここまで読んで気づいた方も多いはずです。レーティングは考え方こそ明快ですが、ポゼッション数の推定に「0.44 × フリースロー試投数」やオフェンスリバウンドの差し引きが入るため、試合中に紙とペンで出すのは現実的ではありません。ラインアップごとに出そうとすれば、なおさら手には負えません。

ここがアプリの出番です。BoardStrategistはiPad向け(iPhoneでも動作)のバスケ作戦盤&スコアブックアプリで、買い切り¥1,000・サブスクはありません。スコアブックはタップでプレーを記録する方式で、2P/3P/FTの成功・失敗、リバウンド、ターンオーバーといった基本の記録を打ち込むだけで、ORtg・DRtg・NetRtg・PPP・Paceを自動算出します。面倒なポゼッションの見積もりも割り算も、アプリが引き受けます。

アプリ内には「指標の見方」の解説も用意しているので、数字が何を意味するのか迷ったときはその場で確認できます。さらに前述のとおり、5人組ごとのOffRtg・DefRtg・±を見るラインアップ分析にも対応しています。集計した内容はPDFレポートやExcelに書き出せるので、チームで共有したり印刷して振り返ったりも簡単です。コーチは電卓ではなく、数字の解釈と選手への声かけに時間を使えます。

よくある質問

Q1. オフェンスレーティング(ORtg)とは何ですか?

A. 100ポゼッション(攻撃権100回)あたりに何点取れるかを表す指標です。合計得点はテンポ(試合の攻防回数)に左右されますが、ORtgは攻撃1回あたりの効率で見るため、テンポの速い遅いに関係なくチームの得点力を公平に比較できます。守備側の同じ指標がディフェンスレーティング(DRtg)で、ORtgからDRtgを引いた差がNetRtgです。

Q2. 得点が多いチームほど強いのではないですか?

A. 必ずしもそうではありません。合計得点は「攻撃の効率」と「攻撃の回数(Pace)」の掛け算です。テンポが速く攻防回数が多いチームは、1回あたりの効率が並でも合計得点は増えます。逆にテンポが遅くても効率が高ければ強い。強さを測るときは合計得点ではなく、100ポゼッションあたりで規格化したORtg・DRtgで見るのが正確です。

Q3. PaceとPPPは何が違いますか?

A. Pace(ペース)は1試合のポゼッション数、つまり攻防をどれだけ多く繰り返したかというテンポを表します。PPP(Points Per Possession)は1ポゼッションあたりの得点で、ORtgを100で割った効率の指標です。Paceは量、PPP(ORtg)は質を測るものと考えると分かりやすく、強さに直結するのは質のほうです。

Q4. レーティングは高校・部活のチームでも使えますか?

A. 使えます。ただしORtgやDRtgの水準はカテゴリによって変わるため、NBAの平均値などをそのまま自分たちの合格ラインにする必要はありません。大切なのは絶対値ではなく、自チームの試合間の変化や、対戦相手との差分を見ることです。同じ物差しで比べれば、テンポの違う相手とも効率で正しく比較できます。